SEMの常識2021 真の姿を撮えよう
〜機能性材料から生物組織まで〜
日時※ | :2021年8月27日(金)10:00〜18:00 |
場所(オンライン開催)※ | :理化学研究所 横浜キャンパス |
プログラム(PDF版) |
基礎講座(10時〜11時30分) |
1. | 生物試料のSEM解析 “基礎 plus 1” |
盛一伸子(慶応義塾大学) | |
概要: 生物試料全般のSEM試料作製法の基礎と新しい技術の一端をご紹介する。生物試料の主な特徴は、水分を含み主に軽元素で構成され導電性に乏しい事であり、これらはSEM解析にとって大きな障壁となる。近年ではSEMと周辺機器の発展に助けられ、誰でも容易に美しいSEM画像を得ることができるようになった。そこで改めて重要視されるのが適切な前処理である。固定〜脱水〜乾燥〜コーティングという基本は昔から変わらない。基本を理解した上で試料に応じた微妙な匙加減や工夫を加えることも大切で、これらの情報をプラス1としてお役立ていただければと思う。 | |
2. | SEMで得られる信号とチャージアップ対策 |
小松恵理(サーモフィッシャーサイエンティフィック) | |
概要: 走査型電子顕微鏡(SEM)では電子ビームを照射した際に様々な信号が発生するが、この中でも二次電子は帯電現象(チャージアップ)の原因となり観察の際に像障害が生じる。この現象の機構およびその対策について紹介する。 | |
3. | SEMの倍率定義と測長精度の向上 |
多持隆一郎(日立ハイテク) | |
概要: 走査電子顕微鏡(SEM)は、電子レンズで細く絞られた電子線を観察対象試料に照射し、偏向コイルを用いてX,Y二次元方向に走査しながら、試料から発生する二次電子や反射電子を検出し像形成を行っている。SEMの倍率は電子線の走査幅と表示画面の長さの比で定義され、比較的容易に微細構造の測長が可能である。このため半導体プロセスラインでは、測長SEMを用いてデバイスパターンを自動で測長し品質管理することが日常的に行われている。そこで今回は、汎用SEMを用いて微細構造の長さを図る際に注意する点などについて、SEMの倍率の定義も含めて紹介する。 |
ブレイクアウトルーム |
講師の先生方(11時30分〜12時)と、企業展示、ポスター (11時30分〜13時)に分かれてブレイクアウトルームを設置します。 |
応用講座1(13時〜14時) |
4. | 低加速電圧SEM-EDXによる実用材料の分析 |
中村貴也(JFEテクノリサーチ) | |
概要: 極低加速電圧での観察が可能な走査電子顕微鏡(ULV-SEM)の普及と、エネルギー分散型X線分光器(EDX)の技術向上により、SEM-EDX分析の可能性が広がっている。我々は、大口径のウィンドウレスシリコンドリフト検出器(SDD)を1 kV前後の加速電圧で使用し、材料最表層および微小部のイメージングと元素分析の両立を目指している。従来のSEM-EDX分析と、表面感度の点でオージェ電子分光(AES)分析、空間分解能の点で透過電子顕微鏡(TEM)-EDX分析、とを補完する分析技術を確立した。本講演では、単層酸化グラフェンや鉄鋼中の微細析出物を分析した事例を紹介する。 | |
5. | 金属材料の組織や元素分析に関する加熱その場観察技術 |
杉山昌章(大阪大学) | |
概要: 金属材料の多くは熱処理や冷却プロセスを経て製造されるので、高温での組織変化を直接知りたいというニーズは大きい。その点でバルク試料を扱えるSEMを用いた高温組織観察技術は魅力的であるが、真空中での観察、試料ドリフト、高温での検出器動作の問題など、まだまだ技術課題も多い。汎用的なSUS等の材料を用い、100μmサイズ以下の試料を扱うMEMS技術のメリットや課題、また汎用のmmオーダーサイズの試料を用いた加熱その場観察時のSEM内雰囲気の問題や高温での元素分析技術、さらにはEBSD法を用いた結晶方位解析技術などについて、最近の技術動向を含みながら研究例を紹介する。 |
休 憩 |
応用講座2(14時10分〜15時40分) |
6. | 動植物組織のアレイトモグラフィー&光電子相関顕微鏡解析 |
豊岡公徳(理化学研究所) | |
概要: アレイトモグラフィー(AT)とは、連続切片をスライドガラスに載せ、各切片の同一箇所をSEMで撮像し、積み重ねることで3次元像を得る方法である。さらに、光顕と電顕で同一箇所を撮像し相関を得る光電子相関顕微鏡法(CLEM)を組み合わせることで、目的分子の位置を特定し3次元像を得ることができる。本講演ではATおよびCLEMの基礎、動植物試料の前処理法、撮影後の画像処理技術について紹介するとともに、その応用についてお話しする。 | |
7. | とりあえず手元でやってみるAI画像処理 |
石村貴暢(株式会社マックスネット) | |
概要: 現在、AIを利用した画像処理は一般的なものになりつつある。顕微鏡画像を対象とする多くの研究者の課題である「セグメンテーション」についてもAIにより解決できる事例も増えてきた。その技術のベースは公開されているものの、実際に利用するにはAI固有の知識やプログラミングに関連する知識が必要で、まだまだ導入が困難なことが多い。本講演では、専門知識不要でAI画像処理が導入できるパッケージソフトウェアを利用し、初心者でも気軽にAI画像処理を行うことができることや、教師画像が簡単な操作で作成できることを、具体的な事例を用いて紹介する。 | |
8. | X線・電子相関顕微鏡法とセマンティック解析 |
村川泰裕(理化学研究所) | |
概要: 最新の顕微鏡技術によって、生体組織の複雑かつ微細な構造をより深く理解することができる。今回、広域電顕技術(広域切片SEM法)、3D立体電顕技術(アレイトモグラフィ)、さらには軟部組織X線顕微鏡技術といった最新の顕微鏡技術を利用した、生体組織解析の成果を紹介する。また、深層学習を用いたセグメンテーション技術を適用することで、生体構造をより定量的に理解する試みについても概説する。 |
ブレイクアウトルーム(〜17時) |
講師の先生方、企業展示、ポスターに分かれてブレイクアウトルームを設置します。 |
当日は常時250名前後の聴講者と、ブレイクアウトルームで6社の企業展示ががありました。
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