SCAN TECH 2018

SEMテクニックの温故知新
一周まわって知らない技術
〜3年目からの疑問〜

日時:2018年8月31日(金) 10:00〜18:30
場所:東京都市大学 世田谷キャンパス
(〒158-8557 東京都世田谷区玉堤1-28-1)
 

 

基礎講座

切るか、磨くか、何とかするか 〜試料前処理を極める〜
 

1.SEMのためのウルトラミクロトームによる試料作製の基礎と最新動向
石原あゆみ( ライカマイクロシステムズ(株) )
 
<概要>
ウルトラミクロトームは生物試料のTEM用超薄切片作製を目的として開発された装置です。
現在では生物・高分子材料中心にTEMのみならず、SEM、AFMなど表面解析装置の前処理にも活用されています。
ナイフを用いた切削で薄片や断面を作製するため、加工時の熱やイオンによるアーティファクトがなく短時間で前処理が可能な点が特徴です。本講演ではウルトラミクロトーム法の簡単な原理から、SEM用の断面作製における実際的なポイント、最近話題のSEMによる連続切片観察などの最新アプリケーションなどをご紹介いたします。
 
 
2.イオンビーム(FIB・BIB)を用いた試料作製法の基礎と応用
黒田 靖((株)日立ハイテクノロジーズ )
<概要>
走査電子顕微鏡(SEM)の性能向上に伴い、SEM性能を最大限に発揮して断面観察をするためには試料作製が重要となってきている。試料作製といっても材質や観察目的によってミクロトーム法や機械研磨法など様々な手法が用いられている。本講演では、イオンビーム(Focused Ion Beam(FIB)・Broad Ion Beam(BIB))を用いた試料作製について、イオンビーム法の基礎と特徴を紹介すると共に、FIB法とBIB法の違い、それぞれの長所と短所、さらに応用例として断面試料作製後のSEM観察事例について紹介する。
 
 
3.試料作製法 ― 切断、埋め込み、 研磨―
太刀川 茂樹( ハルツォク・ジャパン(株))
><概要>
観察対象領域が広く、ピンポイントで観察位置が決まっている場合や、EBSDなどの測定装置の都合に合わせて試料形状を一定の規格以下にする必要がある場合に湿式切断機で切断し、試料保護のために樹脂に埋め込み、そして研磨作業を行う事になります。
この講習会では、切断、埋め込み、研磨の基本的な考え方と、それぞれの作業段階での注意事項について具体的な事例を挙げながら解説します。特にEBSD観察用試料は、一連の作業で生じた試料表面のダメージ層の除去が必要なため、多くの方が苦労し、その処理方法の標準化にも触れる予定です。
 
 
休  憩

SEMに関するQ&A(スライド表示)
 
 

応用講座1

低加速観察の進歩と応用
 

4.走査電子顕微鏡における減速法の原理と応用例
名越 達郎(日本電子(株))
<概要>
ナノスケールの多孔質材や粒子の特性解析に表面の構造を観察することは重要である。この目的のために走査電子顕微鏡が用いられるが、極表面およびダメージレス観察のために低加速電圧の電子線の使用が必須である。しかし、そのような電子線では収差の影響が大きくなり高分解能観察が困難になる。その解決法として試料にバイアス電圧を印加し、電子線が試料に衝突する直前で減速させる方法(減速法)が用いられる。この時に試料表面から発生する電子を各種検出器で検出することで様々な情報を得ることができる。今回、減速法の原理とその応用例を紹介する。
 
 
5.連続切片SEM・3D再構築法
甲賀大輔(旭川医科大)
<概要>
連続切片SEM法は、ガラスなどの固い基盤にのせた樹脂包埋連続切片をSEMで観察し、得られた連続断層像から興味ある構造を3D再構築することができる新たなSEMイメージング技法である。この手法は、@連続切片を半永久的に残すことができる、A免疫電顕法への応用が可能であるB広い領域を観察できるなど、多くの利点がある。本講演では、私たちが独自に開発した連続切片SEM法の手順を詳細に紹介するとともに、その応用例も示す。さらに、この手法の今後の可能性についても考察する。
 
 
ポスター発表

SEMに関するすべての話題について
Webより現在募集中
 
 

P1液体の観察技術
藤本 亜由美( (株)カネカテクノリサーチ)
<概要>
 電子顕微鏡内は真空であるため、液体やゲルなどの真空で状態が変化する物質は電子顕微鏡観察をすることが困難です。このような物質をミクロなレベルで観察する場合は、観察手法や前処理方法を選択し、使い分ける必要があります。
 現在、弊社では、凍結割断レプリカ法(フリーズフラクチャーレプリカ法)やクライオSEM、環境制御型走査電子顕微鏡(E-SEM:environmental scanning electron microscope)を用いて湿潤状態観察をすることができます。これらの手法を用いて、試料のありのままの姿を見た事例をご紹介します。
 
 
P23つの環状型カラム/レンズ内検出器を用いた試料最表面SEM観察技法
村田 薫( 村田 薫(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株) )
<概要>
 これまで試料最表面を正確に捉えるには、照射系のビーム条件変更により行われてきた。しかしながら結像系(検出系)を操作することで像解釈はより定量的になり材料を正確に把握できる可能性がある。 ここでは、SEMの複数の検出器を使用し、より明確な材料の解析を試みた。特に数ナノメートル程度の厚みのコーティング層が均一に表面を覆われているかどうかを判断する手法として述べる。
 
 
応用講座2

拡がるSEM解析技術の今
 

6.リチウムイオン二次電池における活物質材料の結晶方位解析
 〜EBSDから高分解能STEM観察による解析〜
島内 優(JFEテクノリサーチ(株))
<概要>
リチウムイオン二次電池は車載用,民生用ともに性能向上,長寿命化,高信頼性化のための研究開発が旺盛である.高容量化や長寿命化,温度特性向上など個々の目的に対して,材料種に応じた最適化が必要とされる.本講演では,高容量化のための負極材料として注目されるシリコン(Si)について,リチウムイオン二次電池を試作して充電にともなうリチウム(Li)侵入と結晶方位との関係をEBSD,高分解能STEM観察により考察した結果を紹介する. 従来の黒鉛(C)に比べ約10倍の容量増が期待できる負極材料として開発が進められている中,今後電池の構造設計などのために重要な基礎情報として,微細構造解析の意義をあらためて考える.
 
 
7.3次元構造観察における機械学習技術の活用検討
萩田 克美(防衛大学校)
<概要>
最近、AlphaGoや自動運転などでディープラーニング(DL)が注目され、画像関連での応用が期待されている。従来の機械学習(ML)やDL技術の概要を簡単に説明するとともに、フィラー充填高分子材料中のフィラーの3次元構造のFIB-SEM観察を中心とした我々の研究を紹介する。MLは、分類、クラスタリング、回帰予測のタスクが実行できる。DLは、MLの一部であるが、多層のニューラルネットワークで、タスクを処理する特徴がある。最近、データの充実、計算能力の向上、そして、ツール開発(数値探索アルゴリズムの進化など)によりDLは成功した。我々はフィラー充填高分子材料系にDLを活用した。その事例を紹介する。
 
 
8.未知試料の分析に非常に役立つEDS多変量イメージ解析
鈴木 実(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株))
<概要>
EDS面分析は、大口径シリコンドリフト検出器の登場により、短時間でのデータ収集が可能となった。又、元素マップは、特性X線ピークが重なる他元素の影響を、各元素ピークのリファレンス波形を使って除去するピーク分離マップが主流となった。ピーク分離マップの抽出には、膨大なスペクトルイメージングに存在する全ての元素ピークを正確に指定する必要がある。未知試料の場合、この作業が困難で、データ収集以上に時間がかかってしまうケースが多い。EDS多変量イメージ解析(COMPASS)は、瞬時にほぼ全ての元素ピークを自動抽出してくれる為、未知試料分析の際は、非常に便利なツールである。実際のデータを使ってその効果を紹介する。
 
 



<ミキサー>ポスターセッション&フリートーキング

演者に講演内容のポスターを提示していただき、それを見ながら個別に技術交流することができます。また、下記内容のポスター展示も行っておりますので、奮ってご参加下さい。

●当日は173名の参加と6社の出展がありました。ご参加の皆様、ありがとうございました。



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