SCAN TECH 2016

多様化するニーズに応えるSEMのアプリケーション
〜生物・材料から地球環境まで、知られざる世界に迫る〜

日時:2016年9月16日(金) 10:00〜18:30
場所:東京都市大学 世田谷キャンパス
(〒158-8557 東京都世田谷区玉堤1-28-1)


[開会挨拶] 稲里幸子( パナソニック(株) )

[基礎講座]

1.チャージアップ現象とその対策

〇渡邉 俊哉( (株)日立ハイテクノロジーズ )
<概要>
 走査電子顕微鏡では、荷電粒子である電子線を試料に照射することで様々な情報を得ている。しかし試料導電性が乏しい場合には、電荷の蓄積(チャージアップ)により様々な現象がが発生する場合がある。この現象は、軽微であれば試料情報を持ち、重度であれば像障害として本来の情報を覆い隠す存在となる。今回、このチャージアップ現象やそれらに起因する各種の像障害とその対応策について基本的な技術および関連情報を紹介する。

2.生物系前処理基礎技術講座

〇許斐 麻美( (株)日立ハイテクノロジーズ )
<概要>
 近年のSEMは低加速電圧観察や低真空観察といった機能が充実し、前処理無し観察できるケースが増えてきている。生物試料においても、低真空モードを活用することでそのままを観察できる場合もある。しかし、多くの場合は固定・脱水・乾燥といった煩雑な前処理を行わないと観察できない。ここでは、これら生物試料に必要な前処理の基礎技術を紹介する。また、生物分野ではTEMで観察してきた超薄切片法による細胞内部構造観察を、反射電子を活用してSEMで観察することにも注目が集まっている。そこで、樹脂包埋試料観察のための前処理方法についても紹介したい。

3.材料系前処理基礎技術講座 〜高分子材料編〜

〇乙部 博英( 旭化成(株) 基盤技術研究所 )
<概要>
 電子顕微鏡の前処理技術について、メーカーを中心に発展してきた材料系は、機密などの理由から、社内に留まっているケースが多く、文献や資料が少ない。走査電子顕微鏡分科会では、これまでにも各方面の技術者に講演依頼(技術の開示・指導)してきた。今回は、高分子材料に的を絞り、包埋・切削・染色など各種基礎技術を御紹介する。


[応用講座(1)]

4.パラフィン切片を利用した低真空SEMによる新たな病理診断法の開発と可能性
〜始まりは腎生検診断から〜

〇稲賀すみれ( 鳥取大学医学部 )
<概要>
腎生検組織の電顕診断は、一般的には超薄切片のTEM観察によって行われている、しかし、電顕試料の作製と画像の解析には専門的な技術や知識を要し、診断が確定するまでに時間もかかるため、医療現場では、適切な治療を迅速に施すために、より簡便で迅速な電顕診断法が望まれている。そこで私達は、最近様々な分野で広く活用されている卓上型低真空SEMの特長、特に“簡便性と迅速性”に着目して、通常の腎生検パラフィン切片で電顕レベルの三次元情報が得られる、実用的で新しい病理診断法を開発したので、その応用例と今後の可能性について紹介する。

5.走査電子顕微鏡による切片観察法とその応用

〇久住 聡( 鹿児島大 )
<概要>
 近年、走査電子顕微鏡(SEM)の技術革新により、低加速電圧の反射電子観察で試料表面のごく薄い領域の像を得ることが可能となった。これにより、透過電子顕微鏡(TEM)像に匹敵する超薄イメージングがSEMによって行われ、注目を浴びている。我々はこの技術を応用し、スライドガラスに貼りつけた樹脂包埋切片をSEM観察する手法を開発してきた。この方法では、試料作製や染色が容易であり、また、電子線ダメージに強いなど、TEMと比して大きな利点がある。さらに、光電子相関顕微鏡法(CLEM法)との組み合わせが容易であるなど、応用範囲が非常に広い。本講演では、これらの“切片SEM法”を紹介するとともに、凍結切片を用いたCLEM法を新たに開発したので紹介する。


[ポスター発表]

P1.FIB-SEM(集束イオンビーム - 走査電子顕微鏡複合装置)を利用しよう!

〇村田 薫( 日本エフイー・アイ(株) )
<概要>
 これまでにFIBを使用されていない方々に向けて、FIB-SEM複合機を紹介します。この複合機は機能が豊富ため様々な分野で幅広く利用されています。基礎から応用に至るまでを紹介し、様々な角度から装置を解説します。この装置は加工機能付きSEMとして捉えられますが、SIM(走査イオン顕微鏡)-SEM(走査電子顕微鏡)複合機として顕微鏡でもあります。顕微鏡としてイオンと電子の違いから始まり、また得られる分析データについて、また加工機として他の試料調整との相違や特徴、微細構造物制作に至る応用までを紹介します。

P2.装置の状態を良く知る(サービスを呼ぶ前に)

〇鈴木 俊明( 日本電子(株) )
<概要>
 何時も使っているご愛用のSEM,ルーチンワークでは何の問題も感じさせないデータが撮れているから然したる問題も感じていなかった今日この頃ですが,普段と違った条件でのデータ撮りをしていると思うような結果が得られないなんてことは無いでしょうか? でも普段から装置の基本的なコンディションや外的要因をよく知っているとこんなときも慌てないで済むことが多くあります.「故障かな?」と判断し,サービスを呼ぶ前にユーザーレベルで解決や判断できることが多くあります.ここでは汎用SEMを中心としたSEMのコンディションチェックにより,「何かおかしい!?」と思った時の状況判断の基準などをご紹介致します.

P3.極低加速電圧SEMによる高分子材料の広範囲モルホロジー観察法

〇大出 奈緒子( JFEテクノリサーチ(株) )
<概要>
 近年、フィルムや自動車、印刷、エレクトロニクスなどの分野で、高性能・多機能化した、多成分・多相系樹脂材料が多く用いられている。その代表例として、強化複合材料やポリマーアロイなどがあり、これら材料の開発や調査には、添加剤の粒度分布や分散状態などのモルホロジーを確認することが必須となっている。  通常、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて観察を行うが、観察範囲が狭いという欠点がある。そこで、重金属による電子染色と極低加速電圧走査電子顕微鏡(ULV-SEM)を組み合わせることで、広範囲におけるモルホロジーの観察が可能となった。  本報告では、ULV-SEMを用いた観察例をご紹介する。

P4.EBSD解析における試料調整技術の最前線

〇小田 武秀( JFEテクノリサーチ(株) )
<概要>
 走査電子顕微鏡に付帯したEBSD(Electron Back Scatter Diffraction)解析は、ナノメートルオーダーの分解能で、結晶の方位、結晶粒サイズ、局所方位差などの分布を広範囲に評価することができる集合組織解析ツールとして広く普及してきた。 EBSD解析は、その原理より試料表面下50nm程度の極表層で生成される反射回折パターンを利用しているため、試料の表面状態に敏感で、試料の表面調整の難しさがユーザーの障壁となっている。本報告では、具体的事例を紹介しながら、各種試料調整手法の使い分けや最新の試料調整設備をご紹介する。


[応用講座(2)]

6.低入射電圧による軟X線分光法

〇高橋 秀之( 日本電子(株) )
<概要>
 走査電子顕微鏡用に開発した軟X線分光器は、極めて高いエネルギー分解能により価電子帯など化学結合結合状態の観察や、高感度等の特徴がある。また検出できるX線そのものが紫外から軟X線という低エネルギーでありことから、入射電圧も数100Vの低電圧でも励起可能である。軟X線分光法の原理とこの低入射電圧分析の特徴について報告する。特に入射電圧を可変することにより数nmから数100nmまでの深さ状態に比較や定量性に関しても議論したい。

7.SEM-SPM連携技術開発と、電池材料、磁性材料への応用

〇山岡 武博( (株)日立ハイテクノサイエンス )
<概要>
 イオンミリング-SEM-SPM装置間に共通の雰囲気遮断試料ホルダの開発を行った。リチウムイオン電池電極ミリング面の同一箇所におけるSEM観察およびSPMの一種SSRM(走査型拡がり抵抗顕微鏡)観察を雰囲気遮断で行い,2次電子像,元素分布,電気抵抗分布像およびそれらの相関を調べた。Nd-Fe-B熱間加工磁石の同一箇所のSEM観察,MFM(磁気力顕微鏡)観察により,2次電子像,反射電子像,AFM像,MFM像の4種の画像同士の重ね合せを行い,個々の結晶や粒界構造に対応する組成,磁性について議論した。更に同一箇所のイオンミリング追加工による3次元的な組成と磁性について考察した。新たに開発したSEM-SPM座標リンケージ技術も紹介する。

8.後方散乱電子回折(EBSD)の氷への適用における課題と解決策

〇繁山 航1,永塚尚子2,本間智之3,高田守昌3,東久美子2, 1,Ilka Weikusat4,Martyn. R. Drury5, Ernst-Jan Kuiper5,Gill Pennock5,Ramona V. Mateiu6,東 信彦3
1 総合研究大学院大学,2 国立極地研究所,3 長岡技術科学大学,4 アルフレッド・ウェゲナー極地海洋研究所,5 ユトレヒト大学,6 デンマーク工科大学)
<概要>
近年,グリーンランド氷床の氷が海へ流出する速度が増加しており,海面上昇への影響が懸念されている.将来の海面上昇を高精度で予測するには,氷床の流動を理解する上で重要な多結晶氷の変形メカニズムを明らかにすることが不可欠である.このため,我々は変形を支配する主要要素と考えられる,氷の結晶方位分布,結晶粒径,含有不純物の解析を行っている.SEM-EBSDは結晶方位や結晶粒径を高分解能で測定できる技術であるが,氷への適用には,いくつかの課題があった.我々はこれらの課題を解決し,EBSDによる氷の結晶方位測定を実現した.本講演では,EBSDを氷に適用する上での課題と解決策,および変形した人工氷をEBSDで解析した結果について紹介する.


[閉会挨拶」
 乙部博英( 旭化成(株) 基盤技術研究所 )




<ミキサー>ポスターセッション&フリートーキング

演者に講演内容のポスターを提示していただき、それを見ながら個別に技術交流することができます。また、下記内容のポスター展示も行っておりますので、奮ってご参加下さい。

●当日は144名の参加と3社の出展がありました。ご参加の皆様、ありがとうございました。



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