SCAN TECH 2013

「SEM形態観察もここまできた 二次元から三次元へ

日時:2013年9月13日(金)10:00〜19:00
場所:東京都市大学 世田谷キャンパス
(〒158-8557 東京都世田谷区玉堤1-28-1)

<開会挨拶>
 1.稲里幸子(パナソニック)

<基礎講演>

 2.チャージアップのメカニズムと対処法
  多持隆一郎(日立ハイテクノロジーズ)

<概要>
SEMは電子ビームを試料に照射し、その後試料から放出された信号を検出して画像を形成している。そのため、電気的な導電性のないものを観察する場合、電子が試料に帯電することにより異常なコントラストを発生する。この現象が一般的にチャージアップ現象として、SEMの像障害の一つである。チャージアップ現象が発生すると、試料の本来の構造に由来したコントラストを得ることが困難となる。今回は、このチャージアップのメカニズムを紹介するとともに、その対処法について紹介する。

<基調講演>

 3.イオン液体の基礎および電子顕微鏡への応用
  桑畑 進(大阪大学大学院工学研究科)

<概要>
イオン液体とは有機化合物の塩であり、融点が極めて低いために室温でも溶融した液体状態にある。しかし、蒸気圧が測定不能なほど低いゆえ蒸発えず、高いイオン電導を示す。この蒸発しないイオン液体を電子顕微鏡の真空チャンバに入れて観察することにより、全く帯電せずに観察できることを見出した。そこで、イオン液体を帯電防止剤としての利用すること、試料を濡れた状態で電子顕微鏡観察すること、そしてイオン液体中で起こる化学反応の様子を電子顕微鏡でその場観察することを思い付き、それらのプロジェクトを推進している。本講演では、それらの最新の成果について紹介する。

 4.FIB/SEMトモグラフィー SEM組成像観察に基づく生物組織の三次元再構築法
  太田啓介(久留米大学医学部)

<概要>
FIB/SEMトモグラフィー法はFIBによる試料切削とSEM組成観察を繰り返すことで組織の3次元再構築を行う観察法である。生物分野での3次元再構築はTEM連続切片法が一般的であったが、数nm単位で試料を切削できるFIB/SEMトモグラフィー法はTEM連続切片法よりも高い空間分解能と定量性を持ことが特長である。生物分野におけるSEM観察は細胞表面の凹凸観察が一般的であるが、本手法ではFIBで削られた平滑な試料断面から組成像を得る。近年のSEM・検出器の進歩により、SEM組成像であってもTEM像に匹敵する組織像が得られるようになり、細胞組織の全構造を観察する手法として生物分野での応用が期待される。

<一般講演> 3次元観察

 5.試料冷却による低融点金属の三次元観察
  松島英輝(日本電子)

<概要>
低融点金属は電子部品の接合材やヒューズ、消防用スプリンクラーの感温材料として幅広く利用されている。その性能評価や材料開発のため電子顕微鏡による評価は非常に重要であるが、軟らかいため研磨やミクロトームでは研磨痕やナイフマークが取りきれないことが多い。またFIBなどイオンを使用した試料作製の場合、加工時の熱ダメージにより試料変形が起こることから、電子顕微鏡用の良好な試料作製が難しい試料のひとつである。
今回、我々はFIB-SEMに試料冷却ステージを取り付け、低融点合金である鉛はんだを冷やし三次元観察を行い、良好な結果が得られたので報告する。

 6.SEM内ミクロトーム法(SBF-SEM)による3次元観察
  藤谷 洋(ガタン事業部 日本ローパー)

<概要>
近年、電子顕微鏡技術の3次元観察手法としてTEMやSEM-FIBを用いた手法が数多く紹介されている。いずれの手法も画像分解能、観察領域等のニーズにより観察手法として選択されてきたが、最近ではSEMの分解能レベルでさらに広領域からデータを取得できるSEM内ミクロトーム法(SBF-SEM)によるデータが紹介され始めている。この手法として最大のメリットは大きな3Dデータボリュームから目的の構造を抽出し、3次元評価ができるという点が挙げられる。今回は、このSEM内ミクロトーム法のシステムの構造、組み合わせSEMに求められる機能とデータ取得時の注意点などについて発表を行う。

 7.FIB-SEMによる三次元観察_−形態から化学、そして構造へ−
  村田 薫(日本エフイー・アイ)

<概要>
SEMによる材料の評価は、二次電子や反射電子を利用した表面の観察に始まり、EDXによる化学情報の取得やEBSPによる結晶解析へと進める。同じようにFIB-SEMによる3次元観察でも、形態の観察から化学情報へ、そしてさらに結晶情報の取得へと移行することができる。 発表ではデータ取得に必要なシステムを紹介し、さらにEDXを利用した際のデータ取得および解釈の注意点やFIB加工によるEBSPのデータ取得の注意点などを述べる。

<一般講演> 3次元再構築

 8.SEM画像からの三次元再構成
  中野和俊(システムインフロンティア)

<概要>
電子顕微鏡像における三次元観察の手法としては、連続切片の像を積層する方法や、ステレオ観察(裸眼、アナグリフ)が以前より知られてきた。
加えて近年では, 顕微鏡装置と連携してより簡便にデータ収録から三次元再構成まで自動で行えるシステムが開発され、三次元観察の応用範囲が広がりを見せている。
弊社(株式会社システムインフロンティア)でも、TEM用のトモグラフィーシステム(TEMography), SEM用のオート・トポグラフィーシステム(3D-Sight), DualBeamFIBに対応した最新システム(Stack'N'Viz)といった製品を展開することで、顕微鏡ユーザーのニーズに応えてきた。
本発表では、それらを実現する機能と、その応用事例を紹介する。

 9.3次元形状の数値化とコンピュータシミュレーション_− 3次元X線顕微鏡による多孔質材料の解析を例にして −
  山本 拳(旭化成)

<概要>
3次元観察後の技術として3次元画像データを利用した解析に着目し、画像解析による数値化とコンピュータシミュレーションへの展開について発表する。数値化やコンピュータシミュレーションを実施することで、形態観察から現象解析までを結びつけることができる。本発表では、1μm程度までの構造を評価できる3次元X線顕微鏡(いわゆるX線CT)を用いて多孔質材料(主に不織布)を測定して得た3次元画像データに対して、空間や構造の数値化、流体シミュレーションを行った結果を紹介する。

<閉会挨拶>
 10.乙部博英(旭化成ケミカルズ)

<ポスターセッション&フリートーキング>
ポスターセッション&フリートーキングの場では、演者に講演内容のポスターを提示していただき、それを見ながら個別に技術交流することができます。
奮ってご参加下さい。

●当日は157名(事前登録120名、当日登録37名)の参加と、5社の出展により盛大に行われました。


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