SCAN TECH 2008プログラム


多様化するSEMテクニックと拡がるアプリケーション

日本女子大学 80年館851教室(東京都文京区)

2008年9月19日(金)10:00〜19:00

      
演題 講演者 所属
10:00〜11:40
 イントロダクション 多持隆一郎 日立ハイテクノロジーズ
 1.知って得するSEMの基礎技術・古い技術を見直してみよう! 高橋一郎 帝京大学医学部
 2.ハイブリッド材料の前処理と観察 乙部博英 旭化成
昼食 11:40〜12:40
12:40〜14:10
 3.クライオSEM法 山下美香 コーセー
 4.見えない氷を作るコツ−凍結技法の基礎と応用− 許斐麻美 日立ハイテクノロジーズ
 5.管状構造の走行と内腔面観察 −鋳型法− 近藤俊三 日本電子
休憩 14:10〜14:30
14:30〜16:40
 6.複合材料の断面作製 森谷久雄 帝人
 7.クライオデュアルビームによるSEM観察 村田 薫 日本エフイ−・アイ
 8.高周波グロー放電を用いたSEM試料前処理法 三谷智明 慶応義塾大学
 9.切り出し・研磨法による微小ターゲットの試料作製について 伊藤喜子 ライカマイクロシステムズ
ポスターセッション&フリートーキング 17:00〜19:00



講演概要


1.知って得するSEMの基礎技術・古い技術を見直してみよう!
高橋一郎(帝京大学医学部)
PC制御SEMは分解能や操作性が格段に進化し、さらに種々の用途に対応できる装置がラインアップされ、今やどのような試料でも容易に観察できる環境が整った感がある。一方、研究者の側では、最新技術を駆使して試料作製し、 観察してもすべての試料で満足が得られる訳ではなく、意外にも「古い技術」で良い結果が得られることがある。今回の講演では、いくつかの“古い技術”での事例を示す。日常業務に追われて、SEMの古い基本技術を試みる機会を逸してきた方々の参考になれば幸いである。


2.ハイブリッド材料の前処理と観察
乙部博英(旭化成)
近年、より高い機能を得るために複数の素材から構成される「ハイブリッド材料」の開発が盛んになっている。ハイブリッド材料の前処理では、一般にFIBやBIBなどイオンビームによる加工が選択される場合が多い。しかし、イオンビーム耐性に乏しい素材から構成される系には適用することができない。本発表ではフラットテレビ用光学フィルムを例として取り上げ、ハイブリッド材料へのウルトラミクロトームの適用および、インレンズ型UHRSEMを用いた無コーティング・高分解能観察事例について報告する。


3.クライオSEM法
山下美香(コーセー)
水や油等の揮発成分を多く含む試料の微細構造、特に3次元構造を観察するためには、試料を凍らせたまま観察するクライオSEM法が有効である。また、クライオSEM法で試料の断面作製法として一般的に用いられている凍結割断法では、試料の脆性部分、特に界面に沿って割断された部分が観察されるのに対し、クライオミクロトーム法やフラクチャー法を適用することで、試料の内部構造まで観察が可能になる。今回はクライオSEMを用いて試料の内部構造を観察する手法とその応用例について紹介する。


4.見えない氷を作るコツ−凍結技法の基礎と応用−
許斐麻美(日立ハイテクノロジーズ)
生物や高分子材料などの軟試料や含水試料においては、凍結技法を用いた断面試料作製が有効であり、その実施には試料を予め凍結固定する必要がある。凍結固定は、試料を硬化させるだけでなく、変化の早い反応を瞬時に封じ込めることができるが、一方で氷晶形成による構造破壊も生じるため、その発生を極力おさえた方法が開発され、利用されている。ここでは、凍結固定法を特に加圧凍結法を中心に紹介し、その応用例を示す。


5.管状構造の走行と内腔面観察 −鋳型法−
近藤俊三(日本電子)
一般に動物組織やバルク試料の内部構造を外から直接観察することは難しい。特に動物組織の血管やリンパ管などは、複雑に分岐・蛇行しながら体内の隅々まで伸展している。これら組織の全体像や三次元的走行を把握するために樹脂を用いた鋳型法が考案され、成熟動物の血管やリンパ管の研究がなされてきた。演者は本法を改良することで極めて小さな個体組織への応用を可能にした。今回、その成果の一端を紹介するが非生物系を含めた広い領域の人たちへの話題提供となれば幸いに思う。


6.複合材料の断面作製
森谷久雄(帝人)
複合材料は、粒子や繊維等を媒体となるマトリクス樹脂中に分散させて、一つの組織構造を形成させることによって、目的とする様々な用途へ性能、機能を付与した材料である。このような材料の内部構造を調べるための断面試料の作製法として、FIB加工観察装置を用いた手法、ブロードなArイオンビームを用いた手法、研磨法、ミクロトーム法、凍結割断法、染色法、イオンエッチング法等が検討されている。本講演では、ガラス繊維強化プラスチック樹脂、無機粒子を含有した多孔質フィルム、PET-Nylon系ポリマーアロイ等について、FIB加工法、凍結割断法、染色法等を用いた断面試料作製と観察事例を中心に紹介する。


7.クライオデュアルビームによるSEM観察
村田薫(日本エフイー・アイ)
SEMにCryoステージを取り付けると、通常高真空下では観察不可能な材料までSEM観察できるようになり観察の対象が広がる。またSEMにFIBを搭載した装置にCryoを取り付けた場合は、対象物を三次元にて評価できるようになる。
そこで発表ではCryo技術とこれまで観察されてこなかった溶液の3次元観察などの応用例を紹介し、Cryo条件下で行うFIB加工の注意点についても述べる。


8.高周波グロー放電を用いたSEM試料前処理法
三谷智明(慶応義塾大学)
試料表面と走査電子顕微鏡(SEM)の関係は、自動車と道路の関係と同じである。高速走行が可能なフォーミュラーカーも凸凹の路面では一般の自動車とさほど変わらない走行を余儀なくされ、その性能を発揮することができない。高周波グロー放電(rf-GD)を用いた試料前処理法は、わずか〜10秒で試料表面の汚染と様々な加工によるひずみ等の影響を除去することが可能であり、SEMの性能を最大限発揮させることができる。SEMのグレードに関わらず“今日見ている画像が明日から確実に変わる”そしてEDX、EBSPにも有効なrf-GD試料前処理法をご紹介します。


9.切り出し・研磨法による微小ターゲットの試料作製について
伊藤喜子ライカマイクロシステムス
試料作製の成否は、電子顕微鏡観察から、より多くの情報を引き出すための重要なファクターである。走査電子顕微鏡においても、その重要性は、日々、実感・痛感している。更に、モノづくりの現場での試料作製技術は、製品開発の進歩に伴って永遠に終わらないテーマであり、昨今の高密度化、高い集積率の試料から目的箇所を、正確に、再現性よく、前処理する事にお悩みも多々と思われる。ここでは、電子デバイス系に多用される、弾性率の少ない硬くて脆い材料において、ミクロンオーダーで切り出し研磨する装置を使って、再現性よく目的のターゲットを狙って試料作製をする流れを紹介したい。


ポスターセッション&フリートーキング
気軽な雰囲気で,講師と直接,あるいは参加者同士の自由なディスカッションの時間をお楽しみ下さい。
ポスター展示およびパソコンを使った簡単なプレゼンテーションも可能です(パソコンはご自身でご準備下さい。 予めご連絡下さい)。