SEMを最大限に活用するコツ
〜材料に適応した試料前処理法と像解釈〜
日時: | 2025年8月29日(金) 10:00〜18:00 |
場所: | 東京都市大学 世田谷キャンパス 7号館 (〒158-8557 東京都世田谷区玉堤1-28-1) |
プログラム (PDF版)
開会挨拶 | 許斐 麻美(日立ハイテク) |
基礎講座(10:10〜11:40) |
1. | SEMによる元素分析の基礎 ‐EDSとWDSの理解から定量分析まで‐ |
森田 正樹(日本電子) | |
【概要】 SEMを用いたバルク試料表面の元素分析手法の基礎について解説します。本講演では、特性X線を利用した元素分析の原理を紹介し、EDS(エネルギー分散型分光法)およびWDS(波長分散型分光法)の分光特性や分析精度の違いについて説明します。さらに、特性X線を用いた定量分析についても取り上げ、定量分析における精度の考え方や実際の補正手法について紹介します。実務で定量分析を行う際の理解や、ステップアップを目指す方に役立つ内容です。 | |
2. | 電子顕微鏡用断面試料作製の基礎と応用 <カミソリからイオンビームまでを使いこなす> |
鈴木俊明(東京電機大学),中嶌香織(日本電子) | |
【概要】 FIBはTEMやSEMの試料作製に不可欠なツールである。FIBが進化する前は試料により作製法を選択する必要があったが、現在では万能に近いツールとなっている。特に半導体デバイスではTEM薄膜内にその構造を正確におさめるにはFIBは不可欠である。また、「その場観察」用の試料作製にも威力を発揮する。一方、断面加工という幅広い視野から試料作製法を見直すと、カミソリや機械研磨、割断などもFIBと組み合わせることにより有効に活用できる。本講演では、その考えに沿って、同一試料を多種の方法で断面加工を行い、より効率的な試料解析法の手順を紹介する。また、FIBを用いた「その場観察」の測定事例も紹介する。 | |
3. | 切片SEM法の基礎 〜観察条件検討の実際とTEM像との比較〜 |
吉原 真衣(日立ハイテク) | |
【概要】 切片SEM法は、ミクロトームで作製した樹脂包埋生物切片をスライドガラスやシリコン基板に載せ、反射電子により生物切片像を取得する観察方法です。反射電子の強度は平均原子番号に依存し、切片中のウランや鉛により強く染色された構造は明るく表示されることから、画像を白黒反転することによりTEM像に類似した生物切片像を得ることが可能です。本講演では、切片SEM法の基礎として、SEM観察前の重金属コーティングの方法から観察条件のパラメータ検討の実際について改めて説明し、加えて、観察対象ごとにSEM像とTEM像の比較から切片SEM法の評価を行います。 |
ポスター・企業展示&休憩(11:40〜13:00) |
会場にてパネル展示を行います |
応用講座1(13:00〜14:20) |
4. | 宇宙地球惑星物質科学へのEDS/WDS分析適用事例 |
吉田 英人(東京大学) | |
【概要】 宇宙惑星物質科学の研究において、地球の地殻やマントルの物質、月・隕石・探査機により回収された物質などの地球外物質の詳細かつ正確な分析は、これらの物質の生成条件や生成環境を明らかにする上で基礎的なデータである。また、高温・高圧実験によって地下深部(地殻下部・マントル・核)の物質の性質や状態を明らかにする研究や超真空・高温実験により太陽系初期の物質状態を解明する研究でも、実験生成物の化学組成を知ることが必要である。これらの観察・化学分析に不可欠な装置がSEM-EDSとEPMA(WDS)である。本講演ではEDSとWDSの使い分けとEPMAの基本的な分析である点分析・線分析・面分析の適用例を紹介する。 | |
5. | In-SEM共焦点Raman分析の原理と応用 |
村田 泰斗(オックスフォード・インストゥルメンツ) | |
【概要】 これまでにもSEMと組み合わせたRaman検出器というのは、その汎用性の高さと化学特性への簡便なアプローチ方法として研究がなされてきた。しかしながら、2001年に国内初号機となるSEM+Raman検出器が納品されて以降、今日に至るまでSEM業界では大きな注目を得なかった。 本発表では、従来Ramanとは異なるコンセプトの最新Ramanについて、測定から解析、データの活用方法まで適用事例を踏まえて紹介する。 |
ポスター・企業展示&休憩(14:20〜14:40) |
会場にてパネル展示を行います |
応用講座U(14:40〜16:40) |
6. | 1nmマテリアルのSEM観察と像解釈 |
本間 芳和(東京理科大学) | |
【概要】 ナノマテリアルは、3次元方向のうち少なくとも1つの次元が100 nm以下の物質と定義されており、その観点でいえば、SEMの観察対象の多くがナノマテリアル、あるいはナノデバイス材料である。本講演では、その中でも、1つの次元のサイズがSEMの空間分解能の限界である1 nmかそれ以下のものを対象に、SEM観察と像解釈について論じる。代表的な「1 nmマテリアル」は,1次元の物質としては原子ステップ及び直径が1 nm程度の単層カーボンナノチューブ(CNT)、2次元の物質としてはグラフェンをはじめとする原子層物質である。 | |
7. | 哺乳動物組織におけるSEM試料作製法の基礎と応用 |
甲賀 大輔(旭川医科大学) | |
【概要】 SEMは、これまで医学・生物学研究において大きな役割を果たしてきた。ここでは、組織や細胞の表面立体構築を観察するための基本的な一般SEM試料作製法をはじめ、結合組織に埋もれた細胞の表面構造をイメージングできる「結合組織消化法」、細胞成分を浸軟処理し、膠原線維だけを観察可能とする「結合組織観察法」、細胞内の割断面から細胞質基質を浸軟処理することで、膜性小器官を選択的に残すことができる「オスミウム浸軟法」について紹介する。ここでは、手法の紹介に留まらず、これらのSEM技法によって得られた画像を数多く紹介し、SEMの生物学領域の可能性について議論する。 | |
8. | セラミックス材料を対象としたSEM観察用前処理〜観察手法 |
横江 大作(ファインセラミックスセンター) | |
【概要】 セラミックス材料は一般に硬く、脆く、そして電気を通さない絶縁体といった特徴を持つ。また、同じ素材であっても原料粉末時の状態が異なると焼結後の特性に違いが出る。そのため、各工程での状態を正確に把握する必要がある。そんな中、材料開発においてはSEMによる微細構造解析は必須の項目となっており、セラミックス材料もSEMによる観察、分析が多くの分野で活躍している。ただ、先に述べたように多くのセラミックス材料は絶縁体であるため、SEMを用いて材料解析を行う際には前処理および観察の条件が非常に重要となる。本発表では、これまでの経験から得られたセラミックス材料を対象としたSEM観察の際の注意点について紹介する。 |
閉会挨拶 | 三井 千珠(オックスフォード・インストゥルメンツ) |
ポスター&企業展示,フリートーキング(〜18:00) |
パネル展示および講演の先生方との意見交換会 |
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