SCAN TECH 2024

柔剛ともによく制す
〜達人に聞く!試料前処理と観察技術の最前線〜

日時:2024年8月30日(金) 10:00〜18:30
場所:東京都市大学 世田谷キャンパス 2号館およびZOOM
(〒158-8557 東京都世田谷区玉堤1-28-1)
 

プログラム (PDF版



開会挨拶豊岡 公徳(理化学研究所)

基礎講座(10:10〜11:40)
     
1.SEM像で何が見えるのか?検出器毎のアクセプタンスの理解と像解釈
小田 武秀(カールツァイス)
概要:
近年の走査電子顕微鏡は複数の検出器が搭載されるようになり、凹凸や組成情報以外の様々なコントラストが観察されるようになったため、得られた像の解釈も複雑となっている。各検出器の特徴と試料から発生した電子信号がどのように検出器へ分配されるか、アクセプタンスを考慮した条件で試料観察をすることで、得られた像の理解をより深めることができる。観察条件設定のアプローチやその違いにより観察される像の変化を紹介する。
 
2.現代SEM分析道の心得
三井 千珠(オックスフォードインストゥルメンツ)
概要:
走査電子顕微鏡の大きな魅力はその拡張性にあります。対象物をナノからミリメートルの広いスケールにて全面的かつ多面的に観察できるSEM本来の能力はさることながら、同時に化学・物理的な性質を明らかにする分析ツールの搭載は現代のSEMの能力を語る上で欠かせません。本講演では分析ツールとして主要なEDS、WDSなどのX線分析装置、結晶方位解析装置(EBSD)、カソードルミネッセンス装置の原理と応用を紹介します。
 
3.高分子材料の試料調製 − トレース(模倣)のための必要条件
丹羽 博嗣(三菱ケミカル)
概要:
筆者が幹事として参画しているソフトマテリアル分科会では、ソフトマテリアルの研究を始めたばかりの方々が試料作製の方法や条件を参考にできるよう、昨年からラウンドロビンテストを開始しました。その初回として、初級者から熟練者までの各研究機関や企業の研究者約20名に共通試料(ポリオレフィン系バンパー材)を配布し、それぞれが自身の方法で試料を調製し、その観察結果を円卓会議で共有しました。現状ではまとめるには至っていませんが、染色だけでなく切削の方法など、「試料作製の手法を伝える」ための課題について、参加者から提供された画像と共に紹介します。
 
ポスター・企業展示&休憩(11:40〜13:00)
会場にてパネル展示を行います

トピックス(13:00〜13:30)
 
4.根圏電顕イメージング:柔剛生物試料を観る断面研磨SEM法の開発
豊岡 公徳(理化学研究所)
概要:
材料系の硬い試料のSEM解析に用いられる切断機と研磨機を用いる前処理技術を生物試料に応用することで、野外の植物や土壌試料でもTEMのような内部構造の断面観察ができることを見出した。野外に生育する地衣類や植物体を周囲の土・石まるごと固定・樹脂包埋し、その樹脂ブロックを切断・研磨して、その断面をSEMで観察する。断面研磨SEM法を用いれば、これまで電顕で観察不可能であった大きな試料や硬い領域を含む生物試料も観察できるようになる。本講演では詳細と具体例を紹介する。
 
応用講座1(13:30〜14:50)
5.EPMAを用いた高分解能軟X線発光分光測定による原子力・核融合炉材料中の軽元素化学状態分布分析
笠田 竜太(東北大学)
概要:
原子力や核融合炉に用いられている材料では、特徴的な核的性質を有する軽元素が活用されている。一方、これらの材料の物理的・化学的性質に対する軽元素の影響を理解するためには、化学結合状態を明らかにすることが有効であり、透過型電子顕微鏡や放射光施設が活用されている。しかし、これらの装置が測定対象とするスケールや測定環境は、材料組織のスケールとマッチしないことも多い。本講演では、電子プローブマイクロアナライザや走査型電子顕微鏡に装着可能な高分解能軟X線発光分光測定法を用いて、原子力・核融合炉材料中の軽元素の化学結合状態分布を明らかにした結果について概説する。
 
6.in-situ充放電SEM観察・分析技術
〜全固体電池Si負極における充放電過程の解析〜
山本 康晶(日本電子)
概要:
バルク試料の形態観察と各種分析が可能な走査電子顕微鏡(SEM)は、車載用に期待されている全固体電池の研究・開発において広く用いられている。また、充電容量や充電速度、安全性などに関わる充放電のメカニズムや劣化過程の解析のために、充放電中のリアルタイム観察・分析も必要な技術になっている。今回、クロスセクションポリッシャ?(CP)による断面加工からSEM内での充放電を同一ホルダーでおこなえるin-situ充放電システムを開発し、SEM-EDS-軟X線発光分光(SXES)法による全固体電池Si負極部のin-situ観察および分析を試みた。本講演では、これら技術と充電状態の異なるSi及びLiの化学状態変化の解析結果について紹介する。
 
ポスター・企業展示&休憩(14:50〜15:30)
会場にてパネル展示を行います

応用講座2(15:30〜16:50)
7.走査電子誘電率顕微鏡による溶液中の生物試料やナノ粒子の直接観察と分析
小椋 俊彦(産業技術総合研究所)
概要:
溶液中の生物試料や有機材料をそのままの状態で直接ナノレベルの観察を行うことは、生命現象の解明や有機材料の構造解析にとって極めて重要である。我々はこれまで、電子線を一旦金属薄膜に吸収させ、そこから生じる電位変化を水溶液中の生物試料を透過させて検出し、観察する走査電子誘電率顕微鏡を開発してきた。この方法では、溶液中の細胞試料等への電子線ダメージを大幅に低減させ、染色処理なしに高コントラストでの直接観察を可能とする。本発表では、この方法を用いた培養細胞や有機材料等の観察結果に関して報告する。
 
8.FIB-SEMシリアルセクショニング
ー観察・解析技術の現状と課題ー
原 徹(物質・材料研究機構)
概要:
組織を3次元的に観察する手法の一つであるFIB-SEMシリアルセクショニング法について、観察・解析技術の現状として以下の2点について紹介する;(@)直交配置FIB-SEMと低加速電圧化による3次元観察の高コントラスト・高分解能化および(A)PFIB利用による観察体積の大型化、さらに分析機能との併用。FIB-SEMでの実際の観察の際には、目的に合致したコントラストを持つ画像の取得を目指しているが、観察技術と同時に、得られたデータに画像解析等を施して必要な情報を抽出する解析技術も重要となる。特にセグメンテーションを含めて解析手法の進歩は著しい。それらの観察・解析技術を、今後への期待も含めて課題をまとめて今後の方向性を考えたい。
 
閉会挨拶横江 大作(ファインセラミックスセンター)
ポスター&企業展示、フリートーキング(〜18:30)
パネル展示および講演の先生方との意見交換会

●当日は138名(現地82名、オンライン56名)の参加と4社の出展がありました。ご参加の皆様、ありがとうございました。



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