SCAN TECH 2023

どうする!この試料
〜世代が繋ぐSEM技法の基礎と発展〜

日時:1日目 8月31日(木)13:30〜19:00
 2日目 9月 1日(金)10:00〜16:30
会場:一般財団法人 ファインセラミックスセンター 2F研修室
 
プログラム(PDF版) 

1日目(2023年8月31日)
 
開会挨拶豊岡 公徳(理化学研究所)

基礎講座(13:40〜15:40)
     
1.どうする生物試料〜こうするSEM観察!
盛一 伸子(慶應義塾大学)
鈴木 智子(理化学研究所・日本女子大学・名古屋大学)
概要:
「どうする、このサンプル!?」と腕組みをしてしまった経験が、SEMに携わる方なら一度や二度はあるのではないだろうか。本講演では、生物試料のSEM試料作製法の基本をお話しするとともに、動物、植物、微生物それぞれのケースにおいて有用な前処理法やSEM観察時の条件などについてご紹介する。一口に生物試料と言っても、1?前後の細菌等の単細胞生物から数cmの組織まで大きさや構造は千差万別であり、さらに観察目的によっても試料作製法を調整する必要がある。基礎はしっかり守りつつ、試料と目的に適した試料作製法を柔軟に選択できるようにしたい。「よし、こうする!」と言えるヒントを本講演から拾って頂ければ幸いである。
 
 
2.SEM観察のための断面作製の基礎〜凍結割断からイオンミリング法まで〜
許斐 麻美(日立ハイテク)
概要:
走査電子顕微鏡は、様々な試料の内部や断面構造の把握にも活用されていますが、断面構造を観察するためには、観察対象とする部位の断面を観察面に露出する前処理が必要となります。また、得られた断面は、清浄で且つ前処理過程で損傷させることなく露出されている必要があり、観察対象の材質やその特性に合った手法を選択して実行することが重要となります。本講演では、断面作製の基礎として、凍結割断法からイオンミリング法までのいくつかの手法を取り上げ、その特長や実際を紹介します。
 
 
3.プラズマFIBを用いた無機材料の大領域3次元構築
吉田 竜視,加藤 丈晴,木村 禎一(JFCC)
概要:
集束イオンビーム(FIB)-走査型電子顕微鏡(SEM)複合機を用いた3次元構築は、その手法の登場以来、各分野で活用されている。従来のGaイオンFIB-SEMでは、3次元構築領域は30μm角程度が一般的であった。近年、大電流のイオンビームが使えるプラズマタイプのFIB-SEMがリリースされた。プラズマFIBではGaイオンFIBに比べて20倍以上の大電流が使用でき、ゆえにこれまで困難であった大領域の加工も現実的に実施できるようになった。本講演では、プラズマFIBで取得した実際の3次元構築データも紹介しつつ、大領域化の効果について紹介する。
休  憩(20 分)

施設見学(16:00〜17:30)

JFCCの紹介および施設の見学

企業展示および意見交換会(17:30〜19:00)
会場にてパネル展示を行います

 

2日目(2023年9月1日)
応用講座1(10:00〜11:20)
   
4.応力印加状態における高分子材料のSEM観察
松下 忠史(旭化成)
概要:
高分子材料の普遍的な課題である力学強度向上に関して、構造と力学物性の関係を理解するうえでTEMやSEMによる構造観察は不可欠な手段である。しかし、応力が印加されていない材料の観察から、力学強度改善策を講じることは必ずしも容易ではない。すでに引張ホルダーを用いたTEMによる先端的なin situ観察事例が報告されているが、SEMによっても応力印加状態における豊富な構造情報を得ることができる。本講演では応力印加状態のex situ SEM観察のための試料作製法と観察事例について紹介する。
 
 
5.大気圧走査電子顕微鏡による液中電気化学反応その場観察
吉田 要(JFCC)
概要:
液中で進行する電気化学反応の理解は電池、電解メッキなど多岐にわたって重要となる。こうした電気化学反応は電解液と材料(電極)表面との界面において進行する現象であり、それをその場観察したいといった要望が高い。近年では特殊な液体セルホルダーを用いた透過電子顕微鏡(TEM)観察も盛んに試みられているが、我々はバルク液相中での電気化学反応といった観点から大気圧走査電子顕微鏡(A-SEM)を用いた新規その場観察手法に着目し、電気化学反応その場観察システムの構築を進めている。本講演ではA-SEMによる各種電気化学反応のその場観察事例を紹介し、そのメリットについて解説する。
昼食(11:20〜13:00)

 

応用講座2(13:00〜14:20)
   
6.植物の組織試料を対象としたFIB-SEMおよび卓上SEMによる細胞内構造の3D解析法
大井 崇生(名古屋大学)
概要:
イネなどの高等植物の葉における大きな組織構造を構成する個々の細胞の全体像を対象とし、高精度な自動連続切削が可能な集束イオンビーム加工装置と高分解能の撮影が可能な走査型電顕との複合装置であるFIB-SEMと、ミクロトームによる手動の連続切片作製を要するものの小型で操作も容易な卓上SEMという対極的な2種類の装置を利用して三次元再構築した事例についてそれぞれ紹介し、SEMによる3D解析の意義や導入時に検討すべき点を共有したい。
 
 
7.樹脂包埋生物試料SEM組織像観察のかんどころ
太田 啓介(久留米大学)
概要:
樹脂包埋した標本をSEMの反射電子を使うことでTEMのような組織像を観察できることがわかってきたのが2004年ごろですので、すでにずいぶん時が経ちました。一方で、FIB-SEMなどでブロック表面を観察する場合や基板上の超薄切片を観察する場合、はたまた準超薄切片で光顕-電顕相関顕微鏡(CLEM)観察する場合など、いろいろな観察法が開発され、最適な観察条件も少しずつ異なります。思ったような結果が出ないなぁと思われている方に、動物組織を中心に取り組んできた演者の経験をもとに、その利点とかんどころを紹介します。  
特別講演(14:40〜16:00)
   
8.低加速電子線チャネリングコントラスト法を用いた半導体結晶のサブ表面構造観察
堂島 大地,金子 忠昭(関西学院大学)
概要:
六方晶系の構造を持つ化合物半導体の成長、熱分解、および酸化等の反応速度は、表面を終端する分子層の積層構造の違いに起因するステップ端原子構造の種類に依存する。従来、この積層構造を観察可能な手法はHR-TEMによる破壊手法のみであった。結晶構造と電子線入射方位に対応したSEM像が取得可能な手法としてElectric Channeling Contrast Imaging (ECCI)法がある。本研究ではこれを応用し、表面より深さ<2nm以下の積層構造が観察可能な新手法として、低エネルギーな入射電子線(〜1keV)を用いたLow-energy ECCI (LE-ECCI)法を紹介する。
 
 
9.全固体Naイオン電池のOperando SEM-EDS観察技術と機械学習を用いた解析
山本 和生,野村 優貴(JFCC)
概要:
全固体Naイオン電池は、高い安全性と低いコストを兼ね備えた次世代蓄電池として研究開発が進んでいる。今回我々は、SEM-EDSを用いて、全固体Naイオン電池を充放電させながら正極/固体電解質/負極表面のNa分布の変化を捉える技術を開発した。また、4Dテンソル分解法と呼ばれる機械学習を用いて、ノイジーなスペクトルから正確な情報を引き出す解析も試みた。講演では、operando SEM-EDSの技術と4Dテンソル分解法の詳細について紹介する。
閉会挨拶横江 大作(ファインセラミックスセンター)

●当日は102名の参加と以下7社より出展がありました。ご参加の皆様、ありがとうございました。

ライカマイクロシステムズ(株)
(株)ステム
日新EM(株)
(株)大和テクノシステムズ
(株)シンテック
(株)アド・サイエンス
(株)真空デバイス

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