SCAN TECH 2017

SEM可視化技術の最前線
〜観察試料の多様性に応える前処理・後処理技術の今!〜

日時:2017年9月15日(金) 10:00〜18:30
場所:東京都市大学 世田谷キャンパス
(〒158-8557 東京都世田谷区玉堤1-28-1)


[開会挨拶] 稲里幸子( パナソニック(株) )

[基礎講座]

1.SEM像形成の基礎

〇中嶌 香織( 日本電子(株) )
<概要>
 走査電子顕微鏡(SEM)は表面形態や組成などの観察、分析する装置として、様々な分野や業種の方々に広く使われています。近年ではSEMの性能と使い勝手が向上したため、初心者でも簡便に観察し、データ取得することができるようになりましたが、SEMの原理を知った上で装置を使うと、試料や測定目的に応じて条件を変え、各種画像調整ができるようになり、今までよりさらにSEM操作スキルがアップすることも期待できます。今回はSEMの像形成の基礎として、SEMの原理と各種条件設定方法の例を紹介します。

2.EDSによる組成分析 ―手法の基礎と測定時の留意点

〇原 徹( 国立研究開発法人 物質・材料研究機構 )
<概要>
 電子顕微鏡で組織観察を行うとき、「見えているものは何か」という確認のために組成分析が必要なことがしばしばある。その組成分析のツールとしては、試料から放出された特性X線を分光して分析する「エネルギー分散型X線分光(EDS)」が用いられる。本発表では、EDSを用いた組成分析の手法について、その原理・基礎を簡単に解説する。さらに、正しい測定・解析のためのいくつかの注意点について述べる。EDSによる組成分析の最近の進展や応用例についてもいくつか紹介したい。

3.光電子相関顕微鏡法(CLEM)の基礎と応用

〇豊岡 公徳( 国立研究開発法人 理化学研究所 )
<概要>
 電子顕微鏡は試料を高分解能で観察できるが、色情報がない微小領域のみの撮影となる。一方、光学顕微鏡は色情報を含む広い領域を観察できるが、分解能は電子顕微鏡に劣る。光電子相関顕微鏡法(CLEM)は、同一試料を光学顕微鏡と電子顕微鏡を用いて観察し、両顕微鏡により得られた像の相関を得る解析法で、両顕微鏡の弱い部分を補うことができる。本講演ではCLEM法の基礎、試料の前処理法、撮影後の画像処理技術について紹介するとともに、その応用についてお話しする。


[応用講座(1)]

4.軟X線発光分析の基礎とバルク状態分析

〇寺内 正己( 東北大学 )
<概要>
 近年、軟X線発光分析技術が電子顕微鏡での状態分析装置として汎用化された。現時点において、SEM/EPMAにおけるバルク試料の状態分析技術として使われ始めている。この分析技術は、これまでのX線分析と何が違うのか、何が新たに分かるのか、長所・短所は何か、などを知ることは、この手法を活用するためには必要不可欠である。この観点に立ち、電子顕微鏡での軟X線発光分析の基礎知識、装置の特徴、手法の長所・短所を理解していただくことを目的とする。

5.NanoSuit法とEDS観察法の併用による生物の低処理元素分析

〇針山 孝彦( 浜松医科大 )
<概要>
 我々は、生きたままの生物の微細構造を高分解能で観察することを目指し、生物試料に生体適合性高分子溶液を塗り、電子線かプラズマを照射し高分子を重合させることによってナノ薄膜(NanoSuit)を形成させ、高真空条件下での生命維持を可能にした。この技法は、これまでの多くの化学物質による処理を行うのではなく、簡単な処理によって成膜させるために、生体試料に含まれる物質を流すことはない。生物の個体はもちろん、組織、細胞、ウィルス、エクソソームなどの観察を可能にした本技術と、EDS観察技術を併用することによって生体の元素分析を実施可能にしたいくつかの例を報告する。


[ポスター発表]

P1.真の姿をみるための前処理・観察技術

〇藤本亜由美( (株)カネカテクノリサーチ )
<概要>
 電子顕微鏡によって試料本来の姿を観察するには、様々な要因を考慮しなければいけません。 前処理では、断面作製方法や導電性付与など試料の組成や構造によって使い分けが必要です。 観察や分析時には、試料のどのような姿が真の姿かを考え、適切な観察・分析条件を選択する必要があります。
 今回は前処理方法と観察条件によって得られる情報の違いについて紹介します。

P2.引張変形下における微細粒ステンレス鋼の組織解析

〇松尾卓、石田喬一、今福宗行( 東京都市大学 )
<概要>
 近年、様々なデバイスの小型化に伴いサブマイクロオーダーの加工精度が要求されるため、微細加工材料の需要が高まっている。また材料の微細化は加工性だけでなく、強度までをも向上させることができる。今日では、実際に微細加工を施したオーステナイト系ステンレス鋼SUS304は自動車部品などで実用化されている。また、このSUS304は変形を付与することによってマルテンサイト相を生成するため、優れた延性と強度を有する。そこで、変形による相変態と結晶粒微細化がSUS304の機械的性質に及ぼす影響を、SEMまたはEBSDによって微視的な視点から調査することを試みた。

P3.Fe-Mn-Si-Cr系合金の変形・熱処理における組織・相硬度解析

〇石田喬一、伊藤薫平、今福宗行( 東京都市大学 )
<概要>
 Fe-Mn-Si-Cr系合金(以下、本合金)は形状記憶効果を有し、変形後に熱処理を施すことで、ε相から母相であるγ相への相変態に基づき変形が回復することが知られている。しかし単結晶材と比較して、多結晶材では形状回復量が大幅に減少する.その要因として、ε変態の結晶方位依存性やすべり変形等に着目した様々な要因が指摘されている。
 本研究ではEBSD法やNano indentation法を用いて形状回復特性と内部組織変化の関連性を結晶構造や方位、相硬度の変化から調査し、形状回復特性の発現要因および形状回復の阻害要因の解明を試みた。

P4.低加速電圧SEMを用いた磁区コントラスト観察

〇小田武秀、佐藤馨、北原保子、桜田委大、名越正泰 ( JFEテクノリサーチ(株) )
<概要>
 走査電子顕微鏡(SEM)を用いた磁区観察方法は、古くから知られているが、磁区コントラストを得るために、特殊な装置や装置の改造が必要である等の理由で普及していない。今回、熱消磁したネオジウム磁石のC軸方向断面について、Everhart-Thornley(ET)検出器と環状インレンズ(IL)検出器を搭載した市販のSEM(Zeiss社製ULTRA55)を用いて磁区観察を試みた。その結果、装置を改造することなく、低加速電圧入射電子を用い二次電子像の観察条件を制御することで、磁区コントラストを取得できることを確認した。


[応用講座(2)]

6.FE-SEMにおけるその場観察技術

〇岡本 嘉紀( (株)コベルコ技研 )
<概要>
 近年、動作環境下での特性の変化や形態の変化を捉えるその場(in-situ)分析・観察技術のニーズが増加している。全固体電池においては、動作環境中での動的な形態変化を捉える要望が増しているが、すべて固体で構成されるため、活物質/固体電解質の良好な界面形成、電子やイオンの伝導経路の最適化が必要となる。当社では、全固体電池の反応機構解明のため、FE-SEMの観察室内にて、充放電、圧力計測、加熱、抵抗測定が可能なin-situ SEMホルダを設計・開発し、反応に伴う形態変化を可視化した。
 本講演では、当社にて試作したSi系負極を用いた全固体電池において、構成圧を負荷した状態で充放電を行いながら活物質の膨張を捉えた事例を紹介する。

7.FIB-SEM装置による無機材料の解析例

〇加藤 丈晴( (財)ファインセラミックスセンター )
<概要>
 集束イオンビーム(FIB)装置に走査型電子顕微鏡(SEM)カラムを複合したFIB- SEM装置では、FIBのみのシングルカラム装置と比較して、多くの機能が追加され たため、故障解析や材料分野における研究開発等に限らず、様々な分野で活用さ れている。FIB装置の基本機能を説明した後、FIB-SEM装置を用いた応用例とし て、FIB断面加工と、その後のSEM断面観察および分析例、さらに、FIBによる連 続断面加工と各断面を連続して撮影したSEM像を用いた3次元構築例について紹介 する。

8.電子顕微鏡画像の画像解析と定量化

〇池崎 満里子( 日本ローパー(株) )
<概要>
 近年は、電子顕微鏡技術の発展に伴い、試料表面だけではなく、試料内部の観察も盛んに行われている。また、TEMトモグラフィー、FIB-SEM複合機、SEM内ミクロトーム(3View)といった手法も開発され、高分解能の連続断面画像の取得も可能になった。これらの取得画像の3次元構築、対象物の抽出、測定(定量化)も普及してきているが、電子顕微鏡画像では、輝度ベースによる2値化が困難なため、対象物の抽出が課題となっている。本講演では、電子顕微鏡の画像解析の工夫点や、有効な手順を紹介する。


[閉会挨拶」 乙部博英( 旭化成(株) )




<ミキサー>ポスターセッション&フリートーキング

演者に講演内容のポスターを提示していただき、それを見ながら個別に技術交流することができます。また、下記内容のポスター展示も行っておりますので、奮ってご参加下さい。

●当日は155名の参加と5社の出展がありました。ご参加の皆様、ありがとうございました。




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