SCAN TECH 2014

もうひと手間でここまで変わるSEMの世界
前処理基礎技術から代替新技術まで

日時:2014年9月12日(金)10:00〜18:30
場所:東京都市大学 世田谷キャンパス
(〒158-8557 東京都世田谷区玉堤1-28-1)

<開会挨拶>
 稲里幸子(パナソニック)

良いSEM像を得るために
中嶌 香織( 日本電子 )

<概要>
走査電子顕微鏡(SEM)は電子線を試料に照射することにより発生した信号を各種検出器で受け、画像化する装置であり、現在幅広い分野で用いられている。また、SEMのユーザー層や観察対象試料は様々であり、それに対応する様に、試料の前処理、観察手法も多種多様になってきている。しかし、それが時にユーザーを悩ませる。今回「もうひと手間でここまで変わるSEMの世界」というタイトル通り、ユーザーが前処理や観察手法で少し工夫すると、今よりSEM観察技術が向上できうる手法を紹介する。

バイオ研究におけるSEMの応用
甲賀 大輔( 新潟大学 )

<概要>
走査電子顕微鏡(SEM)は、光学顕微鏡や透過電子顕微鏡による切片の平面的な観察と異なり、試料を立体的に観察できる利点がある。私たちはこれまでに、このSEMの特徴を生かし、細胞や組織の立体微細構造解析を行ってきた。そこで本講演では、バイオ研究にSEMを応用したいと思う初心者を対象に、SEMによる生体組織試料作製法の基礎について説明する。また、これまでのSEMによるバイオ研究の中で開発されてきた特殊な作製法の中から、いくつかの手法(アルカリ消化法、オスミウム浸軟法など)についても具体的に紹介し、その応用例を示す。最後に、バイオ研究におけるSEMの可能性と将来について考察する。

高分子材料の前処理および顕在化技術」 〜ナイロンの球晶をSEMで観る〜
志波智子( ユニチカ )

<概要>
近年のSEMは高性能化により低加速電圧下での観察が容易となり、絶縁体である高分子材料でも前処理を施すことなく、その構造を観察することが可能となってきました。しかし、依然として前処理なしでは不十分な場合もあり、観察対象に適した染色やエッチングなどの顕在化技術が必要となります。本発表ではその一例としてナイロンの球晶観察で実施した前処理手法について紹介します。

イオンビームを用いた断面作製  〜ダメージレスの試み〜
高橋未来( パナソニック )

<概要>
最近のデバイス開発において、その機能発現を最適化するために、マクロからナノレベルの構造を理解する必要がある。これらのデバイス構造を正確に捉えるためには、加工変形なく断面を作製し、真の状態を観察することが重要である。 近年増加しているソフトマテリアルや柔/硬材料を組み合わせたハイブリッド材料を用いたデバイスでは、イオンビームによる断面作製がよく活用されるが、従来のイオンビームによる加工方法では熱影響で試料変形などの不具合が起こり、試料作製や観察が困難な場合が増加している。そこで、今回、これら材料に有効な低損傷断面加工技術について試みたのでご紹介する。

水の凍結現象のESEM観察
村勢 則郎( 東京電機大学 )

<概要>
低真空で液体状態の水存在下で観察可能な環境制御型SEM(ESEM-2700、(株)ニコン)を用いて、高分子(架橋デキストラン)ゲルビーズの凍結挙動、およびクモ糸の氷核活性に基づく水の凍結現象を観察した。  試料は過飽和水蒸気圧下で凝縮した水滴を付着・吸収させて調製した。試料ステージの冷却および試料室内の脱気に伴う水の気化熱吸収により冷却して、水を凍結させた。  凍結乾燥したゲルビーズでは、架橋密度の低いビーズほど著しい形状変化が観察された。また、クモ糸を用いた観察では、水の凍結はクモ糸の周りから開始され、氷核活性を確認することができた。

含水試料観察へのクライオSEMの応用
山下美香( コーセー )

<概要>
生物、食品、化粧品のような水を多く含む試料をSEMで観察する場合、いかにその構造を保存して観察するかがポイントになる。その手段の一つとして、試料を凍結固定し、そのまま観察できるクライオSEMは非常に有効である。しかし、試料に含まれる水が多ければ多いほど、試料の凍結に神経を使う必要があり、また、試料の内部構造を観察するためには、凍結したままの試料の断面をいかに効率よく出すかがポイントになる。今回は、クライオSEMで観察する場合の凍結固定法・断面作製法について、工夫例を紹介する。

イオン液体における応用技術
米澤 徹( 北海道大学 )

<概要>
イオン液体とは、カチオン、アニオン双方が比較的サイズの大きなイオンから構成される塩、一般には有機塩であり、常温で液体(常温溶融塩)のものをいう。これは液体ではあるが、塩であるため、非常に低い蒸気圧を持っており、さらに導電性が高い。そこで、このイオン液体を導電性のないサンプル表面に薄く塗布できれば、金属コートなどと同様、容易にSEMでその形状を観察できるようになる。今回は、イオン液体の種類、そのSEMへの応用法について、基礎的内容から、その実際の利用法についてまでを俯瞰する。

大気圧SEM (Atmospheric SEM: ASEM)
佐藤 主税( (独)産業技術総合研究所 )

<概要>
我々が開発したASEM(大気圧走査電子顕微鏡)は、倒立SEMを備える。SEMカラム上部を観察用薄膜ディッシュでシールし、薄膜上のサンプルを下から観察する。ディッシュ上部には、光軸を合わせた光顕も備えており同視野を観察可能である。蛍光による動態観察と、SEMによる微細構造観察のリンクが容易である。水中、気体中の様々なサンプルや現象をそのまま観察することができる。例えば、薄膜dish表面をコーティングすることで様々な初代細胞を培養する。生きた細胞を光顕で観察し、決定的な瞬間に固定し、下から水溶液中のままでSEM観察する。小脳と大脳皮質のニューロンを初代培養してシナプス形成や機能分化を観察した。

大気圧下で観察可能な走査型電子顕微鏡技術 〜一般化に向けて進化する大気圧SEM〜
大南 祐介( 日立ハイテクノロジーズ )

<概要>
ソフトマテリアル材や生体材料などの含水試料を観察するために大気圧下で観察可能なSEMが強く望まれている。 我々は、バルク試料を大気圧下でSEM観察するために、大気-真空間を分離する隔膜と観察試料とが非接触な状態で 観察可能な技術を開発した。本手法では試料配置空間が大気であるために、これまで試料前処理無しでは観察が 困難であった植物、食品、細菌、体試料、ソフトマテリアル材などが大気下でSEM観察可能となった。 本発表では、様々な試料を観察した結果と、光学式の顕微鏡で観察した試料を大気圧SEMにて同一部位を観察する 光-電子相関観察可能な技術について紹介する。さらに、隔膜と試料との間の大気ガスによって電子線が散乱される 影響を低減する大気圧SEMの高分解能化技術を紹介することにより、大気圧下で観察可能なSEMが一般化する可能性について議論する。"

<閉会挨拶>
 乙部博英(旭化成ケミカルズ)

<ポスターセッション&フリートーキング>

ポスターセッション&フリートーキングの場では、演者に講演内容のポスターを提示していただき、それを見ながら個別に技術交流することができます。奮ってご参加下さい。

●当日は150名を超える参加と、5社の出展により盛大に行われました。



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